小さな掌

「みなみちゃん、大丈夫…?」
「大丈夫…ゴホッゴホッ…っ」

どうしたんだろう。最近どうも風邪気味になってしまった。どうしてだろう。
今まで、何事もなく私はゆたかを助けてきたのに。

言っておくと私の横にいる一見すると小学生にも見られるぐらい小柄な少女は、私のクラスメートで親友の小早川ゆたか。初めて出来た、「友達」という存在。

中学の頃までは、この無口で無表情な性格が原因して友達と呼べる友達が出来なかった。

体は僕の心のこと僕よりわかってくれてる。緊張すれば汗が滲む
いつだったかなぁ 奥歯を噛み立ち止まらせたはずの涙に 悲しみを悲しむということを教わったのは―――

 

ただ単に「みゆきさんがいる高校だから」という理由で受験したこの陵桜高校。でも、そこでゆたかと出逢い、様々な友達に出逢った。私にも、希望というものが持てるような気がするようになった。

希望の言葉をたくさんバッグにつめて旅に出た
引き返すたびに君は受け止めてくれた…。

「―――全然大丈夫じゃないじゃん!」
「…え?」
「さっきからボーッとしちゃって…全然大丈夫じゃない!」
「…ゆたか…」

ゆたかはいつもにはない剣幕で怒っていた。

「…ごめん」
「え…なんでみなみちゃんが謝るの?」
「えぇっ…」
「みなみちゃんに謝られるようなことされてないもん。それなら私こそ、いつも体が弱くてみなみちゃんに気を遣ってもらって…」
「…っ」

「だから、今日は私がみなみちゃんを助ける番なの!」

気付けば、ゆたかは無邪気な笑顔を見せていた。

彼女は本当に、いつも思っていることを包み隠さず話してくれる。

いつの日も言葉を選べず途方に暮れる僕、言葉に頼らず抱きしめる君
君の方がずっと寂しい思いをしてきたのに…――――

しゃがみこむ背中をさすってくれる いつもそばにある小さな掌
どんなに綺麗に着飾られた言葉よりも その温もりに助けられてきた

何もかも上手くいく時ではなく 何もかも上手くいかない時にこそ
人は大切な存在に気付くのでしょう

どんな僕も愛してくれる君に…。

「さ、保健室に行かなきゃっ」
「…わかった」

私は出来る限りの笑顔で答えた。ゆたかのおかげで、笑うことも増えた。

言葉じゃ足りない きっと追いつけないよ…
言葉じゃ足りないけど…

ゆたか…

…ありがとう―――――

 

Fin


あとがき

どうも。アーティストシリーズ第2弾(IQの中野アナ風)歌もの第2弾です。今回はAqua Timez「小さな掌」。アクアの中でも「千の夜をこえて」の次に好きな曲です。

今回は友情CPのつもりです。この2人は本当に百合にしちゃいかんな…というのが自分の中にありまして。少々無理矢理なところもあるかもしれませんが深く考えずにお願いします(笑)