朝倉涼子の憂鬱

日は5月――。事件の数日前である。

こんこん。

「わたし――、朝倉だけど、入っていい?」
「……、入って。」

長門宅。

―――――

「たまには一緒におでんなんてどう?」
「…構わない。」
「ありがと♪」

この画だけを見るとただの仲良しの女子高生2人だが、そうではない。私、朝倉涼子と長門有希の2人は世界に情報爆発を起こしたとされる"涼宮ハルヒ"を観察すべく送り込まれた"情報統合思念体"による"対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース"という、言葉では上手く表すことの出来ないスケールで厄介な存在なのである。私は長門有希のバックアップ担当。

「まぁたまには2人で食べるのもいいかと思って。」
「…」
「…で、そっちはどう?」
「…特に変わった動きはない。」
「…そう。」
まぁ、この子の無表情は相変わらずよね。

「クラスの中では上手くいってんの?…」
「…特に。」
…。
見るからに愚問だった。
「なんか涼宮ハルヒが結成した団ていうのに入れられてるんでしょ?」
「…」
「楽しい?」
「…」
…わたしゃこの子の保護者か。

自分でもなぁに聴いてるんだか。「楽しい」なんて有機生命体みたいなワードを…。

なんだかこの子を見てると無性に思いたくなる。今は無感情でもいつか有機生命体のように「楽しい」とかいう感情を持つようになるんじゃないかって。涼宮ハルヒにも何らかの記録が出るんじゃないかって。待ってたらそうなるんじゃないかって。

目的が全て。優しさに包まれてもなんにもない。

そんなはずだった。

でもここ最近なんとなく、そんなことを思うようになってきた。あの「キョンくん」が鍵になって何かがいい方向へ動くんじゃないかってことも。

でも。

それももう終わる。"同期"。別の時間平面上の自分に対し記憶を共有することが出来る機能。

私の役目は暴走によって役目を終える。

もっと、涼宮ハルヒや"キョンくん"たちと一緒にいたかったなぁ。この子とも…。

…。

 

私は、このままその時へと歩いてゆく。

 

----------あとがき。
2作目です。えぇっと…どす暗いですねwすみません。舞台は事件の数日前です。
思えば「消失」での長門もバグってああなったんだから朝倉でもありかなぁって思って書き上げてみました。個人的には朝倉をクレイジーキャラで終わらせたくなかったのもあって。

次回は、もっと明るいの書けるよう頑張りまーす。